偉人・敗北からの教訓
江戸のマルチクリエイター・平賀源内の敗北から現代に通じる教訓を探る。1728年、高松藩の下級武士の家に生まれた源内は13歳の時に薬効のある動植物や鉱物などを研究する本草学を学び始め、22歳で高松藩に仕官する。3年後、長崎に遊学し、刺激を受けた源内は学者としての道を志し、27歳で妹婿に家督を譲り、江戸で本草学者・田村藍水に師事、大規模な薬品の展示会を開き、イベントプロデューサーとして注目される。
多才で好奇心旺盛な源内は、後に戯作と称される大衆文芸や浄瑠璃の作家としても人気を集める。さらに、摩擦で静電気発生させる装置、エレキテルを復元し、一躍、その名を高めた。ところが、秩父での鉱山開発に失敗し、人生の坂道を転がり始める。そして、52歳のある日、些細な口論をきっかけに人を殺めてしまう。科学、文学、芸術など幅広い分野で才能を発揮していた源内はなぜ、道を踏み外してしまったのか?
自ら出頭し、投獄された源内はおよそ1カ月後、破傷風を患い、そのまま獄中で亡くなった。享年52。源内の葬儀を取り仕切った、蘭学者で医師の杉田玄白は「非常」という言葉を多用し、亡き友への思いを綴った。「あぁ、何と変わった人よ。好みも行いも常識を超えていた。どうして死に様まで非常だったのか」。晩年、源内はある一文を綴っていた。そこに込められた、自らの忸怩たる思いと信念とは?
【出演】
解説:伊東潤(歴史作家)
進行:中西悠理(キャスター)