偉人・敗北からの教訓
商業を活性化させる一方、賄賂政治を行った老中・田沼意次の敗北から明日を生きるための教訓を探る。1719年、旗本・田沼意行の子として江戸に生まれた意次は九代将軍・徳川家重の御側御用取次として幕政に関わりながら頭角を現す。十代将軍・徳川家治の時代に老中となった意次は重商主義を打ち出し、商人による株仲間を容認、営業の独占権を認める代わりに税を取るなど、年貢米以外にも幕府の財源を獲得した。
さらに南鐐二朱銀を流通させ、全国の貨幣を統一するなど、経済手腕を発揮し、繁栄の時代をもたらした。ところが、天明の大飢饉が発生すると、意次への風当たりが強くなる。そして翌年、意次の長男で若年寄を務める田沼意知が殺害されてしまう。さらに1786年には、最大の理解者であった将軍・家治が亡くなり、孤立した意次は老中の辞職を余儀なくされた。幕政を立て直した意次はなぜ、幕府を追われてしまったのか?
田沼政権崩壊の一因となったのが将軍暗殺というフェイクニュースまで生むことになった、庶民の怒りの感情であった。1787年、意次の孫・田沼意明が家督を継ぐと、田沼家は陸奥下村に転封され、意次が遠江に築いた相良城は破却されてしまう。それを病床で耳にした意次は1788年、70歳でひっそりとその人生に幕を下ろした。死を目前にした意次の思い、そして、家族に残した遺言とは?
■出演
進行:中西悠理(キャスター)
解説:伊東潤(歴史作家)